S級の視線
                                    平田生雄

  第26回   【究極の改善
 
 
 物々しいタイトルですが、初心者の技術習得に関する手法について、我流ではありますが、ご紹介致します。
 
 「○○がうまく出来ない子供の指導方法は?」質問の大半が難しい技術ではなく、基本的なキックやコントロールに関する事である。
 サッカーをプレイする上で一番大切な [ Basic Skill ] の習得には細心の注意を払うべきであり、特に上手く出来ない「初心者の時機」を見逃してしまうと「悪癖の除去」に悪戦苦闘させられます。
 成長過程で、そのまま引きずってしまって「○○がうまく出来ないままプレイする」選手をよく見かけますが「あの子は○○が下手なんですわ。」とチームの指導者から聞かされると淋しい気持ちになります。


 個人差も多少有りますが技術の習得や誤りの修正は「鉄は熱い内に打つ」事が肝心で「意欲と根気」 で解消されるようです。
 過剰・随伴動作は「習得の障害物」であるがリラックスして緊張の緩和さえ出来れば、徐々に解消されると思いますが「予想外の動作」の改善には頭を悩まされます。
 [究極の改善]は、最初に正しい動きの習得が出来れば「無駄な遠回り」を回避出来る「バイパス」のようなもので、私が思いついたのも「偶然の副産物」みたいなものでした。
 そのきっかけは「心身障害児童のサッカー指導」でした。


 初めての経験でしたが、一緒にミニゲームを楽しんで終わろうとした時に「蹴り方教えて欲しい」と一人の少年が真剣な眼差しで近寄ってきた。
 何度見せても教えても上手く出来なかったのですが、園長先生や施設の全員が見つめていたので「今度必ず出来るようにするから」と家路についたが、私の苛立ちはピークに達していた。
 以来、何度か訪れて「サッカーのおっちゃん」しながら施設の子供達には「過剰・随伴動作の除去と正しい動きの習得のモデル」になってもらった訳ですが、「私達も覚えたいから」と、園長先生やボランティアの方々も一緒にトレーニングに参加してキックやトラップに取り組む姿にも感動しました。


 「究極の改善」のヒントになったのが施設に有った数々の装着器具で「あの器具は?」何気なく聞いたのですが「筋骨の補助で本人と体が正しい動きを覚える為です」園長先生の明解な回答に光明が開けた思いでしたね。


 延べ20数回通いましたが、大半の子供達がキックやコントロールが上手く出来るようになった頑張りと可能性を体感出来た感動で、涙が止まらなかった。
(ちなみに園長先生は上手くならなかった。)


 賢明な読者であれば「このヒント」でお判りだと思いますが、施設に有る器材を利用して正しい動きの習得を繰り返し、最終的には補助無しで出来るようになったのです。
 初心者や低学年に、自分の手法で[究極の改善]にチャレンジしてみては如何でしょうか。
 過剰・随伴動作の改善方法について書かれた指導書は少ないようですが、楽しくプレイして励ます指導だけで「習得と改善」が出来れば誰も苦労しません。


                       【生】の手記「障害者の笑顔」より抜粋