S級の視線
                                    平田生雄

  第35回   【 Boots Room


 リバプールと聞いて思い出されるのは、伝説の【BootsRoom】とアンフィールドを埋め尽くしたレッズサポーターの歌声『You‘ll Never Walk Alone』が、私のお気に入りである。


 ‘50年代のリバプールは二部落ちして不振にあえいでいたが、見事に蘇生させた名将ビル・シャンクリーと、後を引き継いだ知将ボブ・ペイズリーによって’60〜’80年代に黄金時代と呼ばれるに相応しい成績を残したのである。
 厳格で頑固なシャンクリーとは対照的に温厚なペイズリーに引き継がれたチームの“成功の源”が伝説の【BootsRoom】である。


 リバプールの【BootsRoom】にはビール箱やスコッチも置かれており、ティーブレイクの出来る「憩いの場」でもあったようで、練習後はコーチと話し合い、試合後には相手チームの監督や関係者を呼んで談笑するのが、シャンクリーにとって至極の楽しみであったとか。
 当時、コーチをしていたペイズリーは親交を深めるだけでなく、チームの補強や分析に役立て、何気ないフランクな会話から選手の調子を感じ取る「重要な情報」を集めていたようである。
 栄光の歴史を支えた小部屋で、どのような話をしていたのか知る由も無いが、リーグ優勝18回はマン−U.アーセナルを抑えて最多を誇り、数々のタイトルの大半を獲得したのも、この時代なのである。


 リバプールのサクセスストーリーはさておいて、本題の【BootsRoom】であるが、個人的には良き仲間が集いOpenMindで語り合えて、サッカーを愛する者ならWelcomeな部屋が良いと思うのですが、手頃な所といえば『居酒屋』に落ち着きそうですね。

 庶民的な大衆酒場で、ほろ酔い気分で盛り上がった経験は誰もが持っているし、喜怒哀楽を吐露するにも最適な場所かも知れません。
 会議やミーティングで解決しない事は少なくないもので、腹を割ってリラックスして談笑出来る[場]が必要なのである。
 かの名将が、お気に入りのスコッチで敵将をもてなし、調子の出ない選手を励ます[場]が【BootsRoom】であった事に人間味を感じるし、負けた腹いせにビール箱を蹴り飛ばしたのではないでしょうか。


 余談になるが、‘60年代のリバプールといえばマッシュルームカットで世界のアイドルになった[BEATLES]の出現も忘れてはならないようだ。