S級の視線
                                    平田生雄

 第39回   【同時性と連動性


 澱みなく流れるようなゲーム展開は結果いかんに関わらずチームの完成度・成熟度を測るバロメーターであると言えるのではないでしょうか。
想像を超えるような創造力あふれるイマジネーションプレーには驚きと感動を覚えるものですが、滅多にお目にかかれるものではない。

 プレーに必要な要素は数多く有りますが、ボールポゼッションを高めて展開するためには、素早いポジショニングの修正が必要な事は誰にでも分かりますがゲームで、それを可能にする「鍵」が【 同時性と連動性 】であり、選手の共通理解が質を高める要素でもあるわけです。
 ボールに対して、受ける・押し上げる・広がる・サポートやスペースメイクがスムーズに行われる事で、質の高いボールポゼッションが可能になるのです。
 当然の事であるが、攻撃のみならず守備にも言えることであり、水も漏らさない鉄壁の守りには美しささえ感じるものです。   第13話【基本とセオリー】(参照)

 千変万化な状況に応じてプレーするのは至難の業であると思われがちであるが、的確なポジショニングと意思の疎通で大半は解消できるものです。
 とはいえ、技術のミスや判断の誤りは少なくなっても無くなるわけではないので攻守の切り替えにも【 同時性と連動性 】は必要不可欠であり「備え有れば憂いなし」といえるのではないでしょうか。


 古い話であるが、デッドマール・クラマー氏がトレーニングしている代表候補の選手にイスを差し出して「あなたは座っていなさい」と・・・・?? 訳の解らない選手はクラマー氏に「何故?」と問い質すと「何もしていないなら座って見ている方が良い」と皮肉たっぷりに笑顔で答えたのである。
同じような状況でCoca−Colaを差し出した事も有りました。
 前述の状況よりは少し良いのかも知れませんが「プレーした後に休んでいる選手」を皮肉って当時のCMキャッチフレーズを引用したのである。
以来、連動してプレーをしないで休んでいるような選手は[Coca−ColaPlayer]と呼ばれるようになったのである。


 サッカーの戦術の基礎となるのは「今、ここで、何をすべきか」であり、その意識が薄ければチームの質も低いと言わざるを得ないでしょう。
 世界の最高峰と言われるヨーロッパ チャンピオンズ リーグの試合を見れば高水準な【 同時性と連動性 】を感じ取れると思います。

 
 育成段階の選手に必要な[Essence]は数多くあるわけですが、「見る・考える・行動する」習慣が身に付いてくればプレーの選択肢も広がり、それによって足りない所の改善すべき事も明確になるものです。
 選手や指導者がトレーニングに取り組む姿勢で内容が変ったような経験は有ると思いますが、意欲的にプレーしている時には【 同時性と連動性 】が垣間見えるものであり、Check・Pull away・Spacemake・Support.etc といったサッカーに必要な要素を連動してトレーニングすることでリズムとタイミングや次のプレーの予測等も、習得できるはずです。


 一見、複雑で難しく思われるかも知れないが「簡単な動きの複合」なので、[GoldenAge]を迎える頃には理解出来ると思います。
 早すぎる?筈は無いでしょう、大人でも難しいスーパーファミコンを連動して操れる能力は、サッカーの【 同時性と連動性 】に即座に活かせるはずである。

 もし、子供達が「簡単な動き」なのにチャレンジしていないとすれば、指導者に[Coca−Colaとロッキングチェアー]でもプレゼントしたいものである。

                         【生】のメモ「Hear & Now」より