S級の視線
                                    平田生雄

 第44回   Automatic


 この言葉自体が古臭く感じる程、現代社会では色々な物が自動化され新製品が出る度に驚かされますが、今や何が出来ても不思議ではないと錯覚させられてしまうようである。
 数年前には無かったものが生活の必需品になっているし、とりわけパソコンや携帯電話が使えないと現代社会から取り残されそうである。


 しかし、サッカーのスキルやテクニックは創生期から多少の改善はされては来たものの基本的には「変っていない」のである。
 サッカーの変遷は[システムと戦術]を見れば「その時代」が垣間見えるようで、現代サッカーは「Lessとの戦い」と言われるように時間とスペースが圧縮されて [Compact]なゲーム展開を余儀なくされている。


 無駄な時間とスペースを削除して効率の良い攻守が展開されるとしても、最終的には「人の判断と能力」に委ねられている。
少ない時間とスペースを有効に使う為には、スキルを【Automatic】に駆使する事と判断の早さが要求される訳で、平素からスキルトレーニングは周辺視野を使いポゼッションプレーも視野と姿勢を、なるべく変えないでファーストタッチの質を高める事が大切な[鍵]になるようです。


 ゲームスキルの大半は基本的なパスとボールコントロールなので[Foot Eye& Brain Coordination]でも述べていますが、スキルを【Automatic】に使えるようになるのは難しい事ではないので、個人差は多少有ると思われますが出来れば[Golden Age](11〜13歳)には身に付けておきたいものである。
 会話や文章の「常用句」のようなものですから意識しなくても使い慣れてくれば、その基盤の上に個性や創造性を生かしたテクニカルなプレーを築けば良いのであるから創作活動のようなもので「楽しくて厭きない」筈である。


 【Automatic】にスキルを操れる事が、判断とコミュニケーションの基盤となって「究極のアナログ芸術」が可能になってくるのであろう。
 質の高いプレーを求めれば体力や精神力の強さも重要な[鍵]であり、他にも多くの要素が有りますが、誰もが優先しているのは技術ではないでしょうか。


Basic Skill Automatic Perfect Skill


 習得には時間と反復は欠かせないものですが、意識と質の高い反復をしなければ「いつまで経っても身に付かない」ものであり、ゲームでの[ Try Error ]を楽しむ事で使えるようになり自信が持てるようになるものです。
 私が、指導していて良く使う言葉ですが「胸を張ってプレーしてみなさい」「なるべくボールを注視しないで周辺視野で見なさい」(※初心者を除く)である。
 リラックスした良い姿勢で神経を刺激すれば【Automatic】にスキルを操る事が容易であると実感して欲しいからに他ならないのである。 サッカーは「ここから始まる」と言っても過言ではないし、ここに辿り着いてから「山登り」が始まるのである。


             Foot Eye Coordination ]の基礎より。