第50回 【伝承】
古来より言い伝えられた話しを、伝承文学と言いますが語部によって語り継がれて文章化されたものが「○○物語」として残されている。
「日本昔話」も代表的な伝承文学で、TVアニメとして市原悦子・常田富士男の「名コンビの語り」によってお茶の間の人気長寿番組でしたね。
私も「お気に入り」の番組でしたので、子供達の為にビデオ収録して数十巻にもなりましたが何度見ても見飽きない名作ですね。
話しは変わりますが、私の甥が津軽三味線に魅せられて演奏している姿を見た時に「譜面みたいなものは無いの?」と聞いたら「心・技・体を見て覚える。」という返事が帰って来た時は思わず「エェッ」っと、唸ってしまいました。
十数年前の話なので、今は譜面や弾き方も整備されているのかも知れませんが、日本には下積み時代から姿勢と心得を叩き込まれ免許皆伝といった一人前の証を伝授されるまでを「修業」と言い、更に研鑽を積み重ねることも含めて修業には終りが無いとも云われます。
気迫や息遣いを肌で感じ取り、所作の手順や目配り・気配りの習得は【伝承】する事が適切な伝授の手法であると感じます。
文献や資料から多くの知識を得る事が出来ますが、付け焼刃のような修業と姿勢では習得はもとより、核心には辿り着けないものです。
【伝承】は受け取る側が準備を整えて万全を期して待てる姿勢が肝要であり、与える側の心の扉を開ける事が出来れば、そのエッセンスは伝わってくるものです。
私が勝手に師と仰いでいる、宮本輝紀さんのプレーや話を夢想してみると「日本昔話」のように何度でも、その場面が思い出されるのである。
目に焼き付いていると云う表現が、ピタリと当てはまりますが「へたくそじゃのぉー」と語るテルさんの口癖とニヒルな笑顔まで真似したものである。
サッカーにおける指導法や習得の要点 (KeyFactor) は文献や資料に書かれているので読めば解る筈ですが果たしてそうでしょうか。
「同じレシピで作った料理でも歴然とした違いが有る」このような経験をサッカーで味わった指導者も多いのではないでしょうか。
サッカークラブにも【伝承】の一面を垣間見る事が出来ると思います。 黎明期に誕生したクラブにはユニークで自由奔放なチームが多く見られました。
個性・技術を優先したクラブチームの出現は、日本のユース年代の育成に貢献したと思いますし、クラブチームの「らしさ」は後継者に脈々と受け継がれているようであり、それが社会的に認知されている証であると思います。
そういえば「おふくろの味」というのは懐かしくもあり温かみを感じますね。
代々、受け継がれた家庭の味の代名詞であり、一朝一夕で出来るものでは無いのですが「何も難しいことじゃないよ」と笑顔で答える母親の愛情が、隠し味である事は言うまでも無いし「心のふるさと」は忘れられないものです。
徒然なるままに書き綴りましたが【伝承】の豊かさが伝われば幸いです。
《 執筆後記 》 早いもので二年間に書き綴ったコラムも50話になりましたが愛読者の方々からの暖かい励ましや厳しい意見を「肥やしにして」頑張りたいと思います。
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