S級の視線
                                    平田生雄

 第52回    Byplayer


  美味しい料理には欠かせない添え物や隠し味があるように映画やドラマでも主役を引き立てる【Byplayer】は欠かせない存在であり、名脇役と云われる俳優の演技はさりげないものですが、妙に感動を憶えるものです。


 似たような存在であるが戦国時代の武将には必ず優れた参謀がいたようです。


 戦いに勝つ為の懐刀であり[軍師]と呼ばれ、武田信玄に仕えた山本勘助や豊臣秀吉には竹中半兵衛がいたように名参謀としての誉れも高かったようである。


 サッカーでもゴールゲッターであるFWやゲームメーカーが花形として持て囃されるがチームには必ず欠かせない選手がいるものです。 顕著な例としては、レアルマドリードがベッカムを獲得して落日の兆しをみせているが、放出されたマケレレはチェルシーでも相変わらずいぶし銀の活躍を見せている。


 レアルはイングランドの主将でもあるベッカムに攻撃のバリエーションを期待したのであろうが、守備に不安を抱えるレアルのDF陣からみれば世界でも有数の守備力を持つマケレレを放出したのは「弱り目に祟り目」と云えるでしょう。


 
いぶし銀と云えば、2002年のW−Cupでは森島寛晃選手が、予選突破の牽引的な役割をしてくれたと思うし、セレッソ大阪でもチームの原動力として黙々と汗をかいている姿には「頭の下がる思い」がします。


 バランスの取れたチームというのは「適所適材」という言い古された言葉が当てはまりますが、スーパースターばかり掻き集めたような派手なチームを見ていると味が濃すぎて飽きてしまうものです。


 オールスター戦や紅白歌合戦は年に一回の「お祭り」であるから、それなりに楽しいものですが、毎月行なわれたら「うんざり」するものです。


 サッカーの指導者は【Byplayer】に徹するのが肝要であり、選手の育成や改善に長く携わり偉大で尊敬される指導者になったとしても基本的には【Players First】であるべきだと思っています。  


 「菊作り菊見盛りは陰の人」(吉川英治)「学ぶ事を忘れたら指導する事を辞めなければならない」(ロジェ・ルメール)二人の言葉で締め括った[コラム]を改めて読み返してみると、まさに【Byplayer】の真骨頂を見る思いである。