S級の視線
                                    平田生雄

 
 第55回    未完の大陸


 アフリカのサッカーが注目されたのは‘90年のW−Cupイタリア大会の開幕戦で前回優勝国のアルゼンチンを破ったカメルーンであり’96年にアトランタオリンピックで優勝したナイジェリアでしょうか。


 一目見ただけで我々のサッカーに対するイメージとの違いを感じる筈です。


 並外れた身体能力とダイナミックで野生的なプレーを見ると「ダイヤの原石」のような【未完の大陸】を感じますね。


 戦術やメソッドを無視するかの如く自由奔放にプレーしても違和感の無いダイナミズムがあり「サバンナを疾走する野生の王国」といったキャッチフレーズが似合いそうである。


 アフリカのサッカーに共通して言えるのは、彼らのペースに巻き込まれると太刀打ち出来ないような爆発的な強さを発揮しますが、その反面ペースに乗れないと脆さを露呈して自滅してしまうのである。


 彼らのプレーに規律と忍耐力が持続できるならば、脅威の存在に成り得るであろうと言われますがフリーダムな素材の魅力が半減するかも知れません。


 アフリカ出身の選手を挙げるとすれば、ロジェミラ・ジョージウェア・カヌー・エトーや日本でも活躍したエムボマも含め多数居ますが、アフリカで生まれ育ったEU圏の選手を含めれば驚くほどの選手が輩出されている宝庫なのです。


 経済的にも環境も恵まれているとは言い難いのであるが21世紀のサッカーを変える可能性を【未完の大陸】といわれるアフリカから感じ取れるようです。


 別の角度から見ればアジアも【最後に残された未完の大陸】であり、オセアニアからアジアに移籍したオーストラリアも含めて日本も世界水準のサッカーに手が届く所まで近づいていると言えるでしょう。


 確かにアフリカ諸国からみればアジア人には、躍動感溢れる動物的な魅力やインパクトは強くないかも知れませんが、双方のセールスポイントを融合できれば魅力的なサッカーになりそうですね。


 所詮「無い物ねだり」に聞こえそうですが単純に考えれば強化のヒントになる筈であり育成段階のプログラムに組み込めると楽しいと思います。


 米の品種改良も試行錯誤と英知の結集によって「寒さに強い美味しい米」が誕生したのであり色々な分野からヒントを探ってみるのも楽しいものです。


 W−Cupで南米・ヨーロッパ以外からChampionが誕生するとしたら何処なのか想像をめぐらせるだけでもワクワクしますね。


 警鐘と懸念で言えばデータを分析してシステマチックに編集した[テレビゲーム]のようなサッカーがチャンピオンになるようであればサッカーは【未完のスポーツ】に方向転換してしまうのかも知れない。