S級の視線
                                    平田生雄

 第57回    発掘と育成


 「良い選手とは?」こんな質問をされた経験は有りませんか。

 更に続ければ「良い選手を育てる為には?」をテーマに語り合った経験は指導者であれば必ず有る筈です。


 JFAでは強化の最終段階ともいえる「スペシャリスト育成プロジェクト」を掲げておりますが、取りも直さず世界のTop−10への必須条件であることは自明の理であり【発掘と育成】を根気よく繰り返すしかないのでしょう。


 Pele ブラジルの生んだ世界最高のプレーヤーと称された選手であるが、有名な逸話に「ペレを育てた人はいないがペレを見つけた人がいる」とか。


 そういえば、エウゼビオやクライフやマラドーナも痩せた土壌から発見された輝かしい宝石であり[ストリートサッカー]の申し子であったのだとか。


 サクセスストーリーはそれぞれ異なるものですが共通する部分は、更に技術を磨きゲームで類い稀なセンスを生かす為に[少なからずの改善]も受け入れる度量が彼らを[スーパースター]に導いたのであり、その背景にはサッカーに対するフリーダムな環境が有ったからに他ならないのである。


 今回のテーマはイタリアにコーチ修業の旅をしている河村優氏のコラム「カンピオーネ(偉大な選手)は生まれてくるのか?育てるのか?」に共感する部分が多く感じられたので紹介も含めて書き綴ってみました。


 彼の言葉を借りれば[発掘=天才型選手]であり[育成=努力型選手]になるわけですが、いずれに関わらず【発掘と育成】を繰り返す作業をサッカーに関わる関係者が共通意識を持って取り組む事が肝要なのである。


 その点に関して日本では、20数年前からトレセン活動を浸透させようと取り組んで来ましたので、登録されている公認指導員(数)も世界のトップクラスになり、それなりの成果は日本代表の成績を見れば評価出来るはずです。


 しかしながら日本代表は得点力不足を指摘されると強化指針に「ストライカー育成プロジェクト」を掲げて躍起になりますが、それこそ本末転倒である。


 古き良き時代のペレやガリンシャの時代からロマーリオを経由してロナウジーニョに引き継がれているブラジル、オランダのサッカーが熟成された時代のミケルスのトータルフットボールとクライフ、皇帝ベッケンバウワー率いる西ドイツ、マリオケンペスに酔い痴れた地元優勝ではなくマラドーナのアルゼンチン、プラティニに始まりジダンの時代に成熟したフランスサッカー、強豪クラブチームのサクセスストーリーを含めれば枚挙に暇が無いのである。


 賢明な読者には判っていただけると思いますが、当時の最高レベルのチームとメンバーに支えられたから成し得たものでありイレブンの完成度が高いから攻守のバランスが取れているしチームリーダーも生まれてくるのである。


 単純に言えばペレやマラドーナは、その当時の日本では生まれて来ない逸材であると言えるし、その才能がサッカーに活かされる事も無かったと推測される。


 しかし、世界に通用する[Champione]は環境さえ整えば必然的に育つものであり世界水準でサッカーを語れるようになれば日本にも「世界に通用するイレブン」が誕生するものでありJFAが個を育てる為に躍起になる必要性は無い。


 確かに、サッカーで世界制覇する為には巨額の資金が必要になったと思われるが資金が有っても「水の無い所に井戸を掘る無駄」は不要である。


 いずれにせよ、才能溢れた人材がサッカーに魅力を感じてサッカーに志しを持てるような環境が整ったように感じます。


 その才能と改善課題を真摯に受け止めてチャレンジする選手と指導者が数多く育つ事が日本のサッカーに必然の結晶をもたらしてくれる筈です。


 下記に河村優氏の「カルチョの旅」を紹介しておきますが、彼のような若き有能な青年が日本のサッカーを憂い、こよなく愛している事を誇りに思います。


 7月に結婚されたそうで可愛いお嫁さんの写真と馴初めのメッセージが届きました。『末永くお幸せに』

   http://www.kobe-fa.gr.jp/column/kawamura_main.html