S級の視線
                                    平田生雄

 第59回    Surprise


 友人とサッカー談義していて「最近、胸がときめくような選手やファンタスティックなプレーに出会う 【Surprise】 が少なくなったよね」と話したら「そんな症状を加齢って言うらしいよ。」と笑われてしまった。


 「それって年寄りって事かよ?」と聞き直してみると「感性が鈍って気力や体力が萎えてくる年齢を総じて加齢と言うらしい。」確かに、その兆しは感じる事も有るので敢えて否定はしないが面と向かって指摘されると辛いものである。


  【Surprise】 の基準をペレ・マラドーナ・クライフ・ジダンにしてしまっては次世代の 【Surprise】 は物足りなさを感じるものであり話題も、あの時代の回顧なってしまうと夢も希望も無くなってしまうものです。


 システマチックでコンパクトなフットボールが主流になってしまうと個人の魅せるパフォーマンスは影を潜めてしまって勝利が優先されて、味気ない点取りゲームになる事をサッカーを愛している人であれば望まない筈である。


 いつの時代にも 【Surprise】 は待ち遠しいものであり、今が旬の選手を取り上げてみるだけでも楽しみが増えてくるものです。


 まず‘04年にブレイクした選手と言えば Robinho (サントス⇒レアル)であり、今年のW−Cupアジア最終予選での 朴主永 [パク・ジュヨン](FC−Seoul)は好むと好まざるを抜きにして 【Surprise】 ではないかと思います。


 スケート靴を履いてスラロームしているようなロビーニョのドリブルはゴールまでの道草を楽しんでいるみたいで久々に天真爛漫なサッカー小僧の登場である。


 難産の末、レアルに移籍が決まりテクニシャン揃いのリーガエスパニョールが盛り上がるのは必至であり 【Surprise】 の先輩格であるロナウジーニョ・ジダンと技の品評会を繰り広げて欲しいものですね。


 パク・ジュヨンは大邱出身で中学〜高麗大学に進むまでの各カテゴリーで得点王に輝いたのであるが韓国では異質のストライカーといえるでしょう。


 元韓国代表の右ウイングで’86.‘90のW−Cupに出場したビョン・ビョンジュが大邱市にあるサッカーの名門である青邱中・高校の総監督に就任して、一環指導で手塩に掛けて育てた無名の逸材であり‘04のアジアユース得点王・MVPに輝いたのであるが韓国内でのユース代表選考では「パワー不足で貧弱な体」を指摘されていたようで代表監督のボンフレール(オランダ人)に至ってはW−Cup最終予選が始まっても、期待してはいけないとコメントしていたのですから。


 今年のK−リーグ前期の得点王に輝き19歳で代表に選出されるやW−Cup最終予選でセンセーショナルなデビューをして韓国の本大会出場を決めたのですから  【Surprise】 以外に言葉が見つかりません。


 今や、韓国におけるサッカーの話題を独り占めしている二十歳の救世主であるがコリアンサッカーのパワフルでエネルギッシュなプレースタイルからは程遠いものである。


 蛇足ではあるが、今年から、FC−Seoul のフィジカルコーチは以前、読売クラブや日本代表のフィジカルコーチしていたフラビオって知っていましたか?


 私は、パク・ジュヨンの活躍の陰にビョン・ビョンジュの 【Surprise】 が生かされている事にも大きな感銘を受けました。


 ’86のW−Cupでアルゼンチンと対戦したビョン・ビョンジュはディエゴ・マラドーナに打ちのめされたような 【Surprise=衝撃】 を受けてコリアンサッカーに足りない何かが見えてきたようで、自身の指導方針にフリーダムな楽しみを取り入れて選手育成した結晶がパク・ジュヨンであり、今後もビョン・ビョンジュの育成に注目したいと思っている。


 そして何よりも、日本にも 【Surprise】 が欲しいと願うものであり可能性を秘めた選手も居ると思うし、その予感も有りそうなのですが・・・ 


 いずれにせよ【Surprise】を良い刺激にして私の加齢は、封印しておきたいと思っています