S級の視線
                                    平田生雄

 第62回   Hunter or Getter


 日本代表に限らず、喉から手が出るような場面で絶対に得点してくれるストライカーが居れば頼もしい限りであり何時の時代にも待ち焦がれるものですが、私のストライカー像は 【 Hunter or Getter 】 なのである。


 日本を代表するストライカーと言えば「世界の釜本」であり早稲田大学時代には関東大学リーグで四年連続得点王になり、日本サッカーリーグでも通算202得点の偉業を果し‘68年のメキシコオリンピックでも得点王に輝いた、文字通り日本を代表するストライカーと言えるでしょう。


 J−リーグの誕生以降で見ればカズ[三浦知良]とゴン[中山雅史]が点取り屋としての活躍に止まらず、J−リーグと日本代表の盛隆の立役者であり燃え尽きるまで頑張って欲しいと願っている。


 日本のストライカーに共通して言えるのは 【 Goal getter 】 であり非凡な得点感覚と積み重ねた精進の賜物であると言えますが活躍の背景には良きチームとパートナーが存在している事も事実である。


 世界に目を向けてみるとペレ・マラドーナ・ロマーリオは 【 Goal hunter 】 として語り継がれる代表格であり、エウゼビオ・ゲルト ミューラー・リネカーは 【 Goal getter 】 の代表格と言えるでしょう。


 フランス代表のストライカーは好対照で、アンリは 【 Hunter 】 でトレゼゲは典型的な 【 Getter 】 であると言えるでしょう。


 端的に言えば 【 Goal hunter 】 は相手を抜き去ってGKを嘲笑う様な得点を好む自在型の選手でありゲームメイクする中盤には数多く居るようですがストライカーとしての才能を兼備した選手は稀にしか見当たらないものです。


  【 Goal getter 】 を軽んじでいる訳では無くストライカーはチャンスに対する嗅覚を兼ね備え、尚且つ屈強なCBに対峙出来る心身の強さ持っていなければ務まらないポジションですから[GK]にも匹敵する特殊技能を要求されるのです。


 【 Hunter 】 に共通しているのは Top と言うより [No−8.No−10] のポジションからアクセルを踏む事が多く、観衆の期待が 【 Hunting 】 であることを充分承知しているかの如く、待ち受けている屈強な相手に立ち向かうのである。


 いつの時代でも、パスゲームに終始してしまう単調でアクセントの無い展開に感動する筈も無いし、サッカーが単に得点を入れるだけのゲームであれば [ king of Sports ] として君臨する由も無いのです。


 次世代のストライカーは二列目のポジションにも求められるものであり [No−8.No−10] でプレーする選手の得点力は不可欠でありACミランのカカやバルサのロナウジーニョのようなエネルギッシュで魅力溢れるプレーを見れば、彼らにペレやマラドーナに匹敵する [ Surprise ] を期待してしまうのである。


 稀代の名手達のスーパーゴールやスーパープレーはセピア色になったとしても輝きを失うものではないが感動は薄れるものであり語り継がれるゴールシーンを大舞台で見たいものである。


  日本の現状を危惧している者として 【 Hunter 】 の出現を心待ちにしている一人であり大久保嘉人は臭いのする選手かな と感じますが、武器の使い方が荒削りなのが気掛かりであるが、もう少し見守りたい逸材である。


 中村俊輔も、ひ弱なイメージを払拭してファンタジックな 【 Goal Hunter 】 になれるのではないかと密かに期待させる逸材であり大男達に入り混じって更に磨きを掛けて‘06年の大舞台でブレイクして欲しいものである。


 ストライカーは、ぬるま湯の中では育たないものであり 鉄壁の守備 が 【 Hunter と Getter 】 を育み、厳しい土俵がスタジアムの中に設定されているから凌ぎを削るスペクタクルなドラマが生まれるのであり、未だ見ぬ創造がスタジアムで描かれるから観衆は足を運んでくれるのである。