S級の視線
                                    平田生雄

 第63回   Chega junto


 ブラジルで守備に関して一番使われる言葉でありプロの世界でも草サッカーにおいても日常茶飯事使われている守備の常套句と言えるでしょう。


 
日本語に訳せば通常は「相手について来い」とか「相手を自由にさせるな」って感じなのですが監督やコーチの声色やトーンの強弱で「もっと寄せろ」とか「もっと厳しく行け」となるようで状況が眼に浮かんできます。


 守備に関しては攻撃と違って基本を習得することで守りが上手くなったような錯覚をしてしまうもので守備の原則とカバーリングの意識を徹底すれば鉄壁の守備が出来るかと言えば答えは「No!」であり「絵に描いた餅」と同じで実戦では学んだ基本や原則通りにはいかないものである。


 守備の原点は「相手にゴールを与えない事」であり、ゲームの状況を想定して1vs1では「相手の視線を上げさせないアグレッシブでタイトな守備」を習得する事が肝要であるが辛い作業を繰り返す「楽しくない練習」になりがちである。


 ともすればカバーリングや数的優位な守備を想定するものですが基本的には[数的同数か不利]の状況が「守備の原点」であると思って研鑽すべきである。


 外を警戒すれば中が手薄になり、前を厚くすれば後ろは薄くなるのは自明の理であるが、守備の戦術を机上で解明すると「最終的に局面を数的優位にする事で解決してしまう」指導者や選手も多いようです。


 確かに、紐解いて行けば間違いではないと思いますが習得のプロセスにおいて攻守のエッセンスを会得するには、子供の頃から「ガチンコ勝負」を数多く体感することで、抜く楽しさと抜かれる悔しさが身に沁みて素早い身のこなしが芽生えてくるものでありスポーツに必要な要素が含まれていると思いませんか。


 理屈抜きに攻守の応対をバランス良く交互に繰り返すのが攻守の改善をする「糸口」になる訳で、闇雲に強制するのでは逆効果かも知れません。


 私の「お気に入りのディフェンダー」と言えば、マケレレ・ネスタ・カンナバーロですが世界的に有名だからではなく「数的不利や悪条件」でも、常に冷静で勇猛果敢な「立ち姿」がチームに勇気を与えてくれるからです。


 崖淵に立たされて冷静になれるものではないが絶体絶命の状況でレスキュー隊員が勇敢に立ち向かう姿を見れば感動しますよ。


 人命救助という使命を背負っているから想像を絶する窮地に直面しても冷静に対処出来るのであり、日々の訓練は「厳しさの中で自分自身を律する」から耐えられるようになるのだそうです。


 世界の名手達の守備にレスキュー隊の姿がダブらせるのは私の身勝手な解釈であろうと思いますが「自分を律する姿勢」を持ち続ける事が如何なる「修業」であるかチャレンジしてみるのも愉しいかも知れませんね。


 私も若ければ絶対にチャレンジしたいと思いますが・・・(笑)


 守備に関して、私の大好きな言葉に「守りの駒は美しい」(第13回)というのが有りますが基本とセオリーだけで解決できないのが実戦である事は誰もが承知している筈であり、簡単そうに見えて明快な答えが無いからサッカーは楽しい。