S級の視線
                                    平田生雄

 第67回    GINGA


 南米の選手、とりわけブラジルの黒人選手のドリブルやフェイントを見た時に独特の動きやリズムの違いを感じた事はありませんか。


 スロー再生して観察すると意図的な動きとは別に無意識に身体が反応して揺れ動いているような動きが連動しているのが読み取れます。


 【GINGA】の原点はカポエイラというブラジルで生まれた舞踊や音楽と護身術のような格闘技を融合させた伝統文化であり、アフリカから奴隷としてブラジルに渡った移民達によって考案されたと伝えられている。


 Carnival で踊っているサンビスタのステップやエネルギッシュな身体の動きが【GINGA】であると言えば解り易いと思います。


 日本人が真似して、松健サンバやカズダンスのようにステップとリズムを合わせて振り付けしたとしても 似て非なる踊り にしかならないようです。


 伝説のドリブラーと言われるガリンシャのプレーはボールに触れずに相手を幻惑させるフェイントが随所に織り込まれて、体勢を崩されたディフェンダーに追い討ちを掛けるような究極の虐めは何度見ても不思議な光景である。


 [ Garrincha vs John Bobo ]ガリンシャの餌食になるDFは「間抜けなジョン」と言われて数々の逸話はオールドファンの語り草である。


 ロナウジーニョやロビーニョのようなドリブラーでさえ「異次元のプレー」と言わしめる芸術であり、カズの連続マタギや切返しは霞んでしまいますね。


 ご存知のようにブラジルは多国籍人種の集合体ですが【GINGA】はブラジル人だからといって簡単に身に付くものではないし黒人特有の感性と能力が備わっていなければ身に付かないと言われて来ました。


 その独特の身のこなしやリズム感をサッカーに取り入れると楽しいと思うし子供の頃から触れ合う機会があれば身に付くのではなかろうかと思えるし個人差は多少有るとしても「異次元の感性」が生まれる可能性も有るように思えます。


 我々(団塊の世代)の少年時代から比べたら情報はリアルタイムであり多種多様に生活の中に存在しているし雑音に聞こえる サウンドやリズム も若者達には快適な Music でありギャップの大きさを痛感している。


 【GINGA】に拳法や古武術等を融合して新たに創造される「異次元の手法」がどのようなものか想像を巡らすだけでも楽しみが膨らみます。


 近代サッカーが世界中に愛されるようになって100年にも満たないとすれば人類の歴史から見れば一瞬の出来事みたいなものですが既成概念に捉われずに自由に表現して欲しいものです。


 ガリンシャやマラドーナが、そうであったように・・・