S級の視線
                                    平田生雄

 第68回    Street Soccer


 マラドーナやクライフが語っているように【 Street Soccer 】はサッカーの原点であり生活に密接していて飽きる事無く日が暮れるまでプレイするのが日課でありヒーロー伝説のスタートラインでもある。


 良きパートナーであり恩師でもあるセルジオ越後氏から日本と先進国の「差」は 【 Street Soccer 】に代表される「遊びとサッカーの接点が少ない」と聞いた時に的を射た回答だと思いました。


 しかし、欧米の先進国と言われた国々でも年々路地裏でサッカーボールを追いかける姿は影を潜めサッカースクールにその姿を変えているようです。


 産業の発展と共に路地裏や空き地が少なくなり交通量が増えて遊び場が外から家の中に移ってしまい【 Street Soccer 】から【 Virtual Soccer 】に姿を変えるのでしょうか。


 「いつでも・どこでも・だれでも」が草サッカーやストリートサッカーの売りですが世界中の路地から消えてゆく町の風物詩 になってしまうのは寂しい限りである。


 公園や広場の主役は草サッカーですが【 Street Soccer 】で育った愛好家には石畳やレンガの路地とか傾斜のある曲がりくねった通りも建物の壁や縁石に至るまで大切なフィールドであり広場では味わえない醍醐味もあるようです。


 通行人や住民も大切な障害物であり近所のおばさんや日向ぼっこしている老人も子供達の様子を見守っているのです。


 時代の移り変わりと共にスポーツも変化している訳で、三角ベースと称する草野球に興じていた子供達のヒーローは長嶋茂雄であり王貞治だったのですがリトルリーグ世代のヒーローは清原・桑田からイチローやゴジラ松井へと変わっているようですが次世代のヒーローはどのようにして誕生するのでしょうか。


 サッカー界もアカデミーやプロチームの下部組織のような育成システムが主流になるのでしょうか?


 ジュニア(U−12)世代からトレセンシステムが整備されて良い素材に良い機会を提供出来るようになりました。


 私も指導員として携わっていますので指導プログラムに任務の重さを感じていますが教える事より取り組む姿勢とやる気を大切にしています。


 ハウス栽培された野菜は品種改良されて綺麗に見えるし味や大きさも均等であり露地栽培されていた野菜の味を忘れてしまうようです。


 スポーツの原点は「楽しい遊びの延長線上にある」と思っているので指導することが楽しくなければプレイしている人も楽しめる訳が無いし本来の味を見失わないように心掛けている。


 お叱りを受けるかも知れないが日本中にある公園で「立ち入り禁止」の札が書かれた芝生で子供達が遊ぶことが出来て高い樹木に登れたら・・・ 危ないから?


 高齢者や身障者に配慮した[バリアフリー]は大賛成ですが子供達にも自然の広場を提供してくれたら大人と子供の[垣根]も無くなるように思えます。


 ブランコ・鉄棒・シーソー等の遊具で怪我すると訴えられる時代ですが以前は木登り出来ない男は笑い者だったし危険の度合いは誰もが理解していたから怪我も軽傷で済んでいた筈である。


 我が国では住宅街で子供達が【 Street Soccer 】に興じて家の窓ガラスを割ったりしたらご婦人達はヒステリックに叫んで卒倒するかも知れませんね。


 広場で草野球に興じていた子供の打球が家の窓ガラスを割った時に「誰が打った?」と聞かれて謝りに来た少年を誉めてくれた小父さんがいたのに・・・


 「遊ばなくなったスポーツは滅びる」サッカーや野球に限ってそんな事は有り得ないと思っているが名言である。


 そんな子供が出なくなると言えば分り易いですね。