S級の視線
                                    平田生雄

 第72回    Small Game


 聞きなれないフレーズだと思いますがミニサッカーとかフットサルを意味するものではなくてサッカーの細かなスキルやテクニックを指すものである。


 ゴルフではアプローチショットやバンカーショットを総称して Small Game と言いますがスコアメイクに欠かせないものでありプロアマを問わずテクニシャンと言われる人は Small Game の達人であると言っても過言では有りません。


 パスやボールフィーリングの強弱や距離感とかスピン量のコントロールを自在に操れるように定着させればチームプレーとして役立つ筈である。


 微妙にフェイクを入れて相手との間合いをずらして間を作る事によってプレーの余裕や幅が生まれるものである。


 ディフェンダーも常日頃より Small Game を磨いていればベッケンバウアーやフランコ バレージが自陣で奪ったボールを可能な限りビルドアップしているのが理解出来る筈である。


 ジダンやロナウジーニョのプレーを観察すれば身のこなしに無駄が無く流れに乗ってプレーに変化を付け加えているのが判ると思いますが常に味付けを変える事でサポーターに美味しい料理を振舞っているような錯覚さえ覚えるものです。


 ペレやマラドーナの獲物を狙う眼は非凡なる才能のなせる業であると思われますが、同時に血の滲むような努力とスキルを磨く事に関しては誰よりも貪欲であったかと推測されます。


 取りも直さず Strong Skill と Small Game のコーディネーションは誰にも真似の出来ない自分だけの武器であり「らしさ=専売特許」なのでしょうね。


 ジダンはユース年代には現在と変わらない Perfect Skill を身に付けていたしペレやマラドーナに至っては語る必要も無いが Small Game はスキル&テクニックの総称ではなくてゲームに欠かせない個人技と個人戦術の微調整でありゲームプログラムの中で磨かれるものです。


 当然、それに必要なスキル&テクニックは自身でイメージを思い浮かべながら反復する事で未知の世界が浮かんで来るのだとか・・・。


 夢枕って言葉が有りますが凡人には理解出来ないイメージが次々と湧いて来るようでゲームで披露したくなる衝動は抑えられないみたいです。


 しかし Small Game はサッカー選手であれば多少は持っているものですから足し算するつもりで日々のウォームアップにも取り入れる事も可能でありポゼッショントレーニングにも活かせる筈である。


 世に言う「技術は有るけどゲーム感覚が乏しい」と言われたら Small Game が[鍵]を握っていると素直になれる事が肝要である。


 サッカーが上手くなるのは難しい訳では無く、面倒臭い事が沢山有るものですが取り組む姿勢次第で楽しくなるものです。(当然、苦しくも辛くもなります。)


 最も辛いと思うのは厳しい反復練習によって悪い癖を定着させたとしても指導者や選手が気付かない事である。


 Strong Skill は自分達より弱い相手には脅威であるが Small Game に長けた相手と戦うとジャングルに追い込まれた戦車のように威力が半減するものです。


 日本のサッカー界が眼に見えない程の事であるが見逃して来た反省と教訓を素直に受け止めて改善出来る指導者でありたいと思っている。