S級の視線
                                    平田生雄

 第79回    こだわり


 フットボールを愛し指導者としての道を歩んで30年余年になりますが初心者マークを付けて指導していた頃はコーチングスクールで学んだ事を鵜呑みにして疑う事も無く教える事に生きがいを持って走り続けたものです。


 振り返れば未熟であり恥かしくなるような指導をしていたようですが誰もが通る道であり研鑽と経験を積むことで改善されるようです。


 夢の有る生き方を誰もが望むように夢の有る指導を心掛けようと思うと理想の壁のような迷路に入ってしまうものです。


 そんな自分は嫌いでもないので自ら迷路を求めて迷う楽しみに浸ってみると見えなかった光が視えてくる事もあるのです。


 確かに年齢と経験を積み重ねれば、それなりに指導者として評価されるようですが自分らしさに【こだわり】を持つのも楽しいものです。


 それが偏ったマニアックなものであったとしても思考回路を廻らす事で行き着く所に、こだわりの逸品が見出せれば道に迷ったとしても恥ずべき事ではない。


 【こだわり】は固執するものではなく無くてはならないエッセンスのようなもので あり、その一端を紹介すれば「なるべくボールを見ないでプレーする。」


 当然、幼児や初心者に適応すべきではありませんが「それだけ?」と思われるとしたらそれだけ+α程度の事です。


 個人戦術を定着させる為に不可欠な周辺視野の可視能力も改善されて楽な姿勢でプレー出来るだけでなく対敵動作や判断基準のベースにもなります。


 指導のヒントは誰もが知っている事や見過ごしてしまうような所に有るものですがヒントに気付かないのは活用する術を知らないのではなく悩んでいないから必要ないのでしょうか。


 「見ない・・・。」に辿り着いたヒントは【究極の改善】で紹介した心身障害児童と同じような手法なのですが視力を失った女性との出会いでした。


 「手のひらは視神経と同じような回路が有るでしょ。五感に見る努力をさせればいいだけよ。」いとも簡単に笑顔で語られた驚愕の言葉ですが辿り着くまでの努力は計り知れないと感じました。


 Foot Eye Coordination にして然りであるが自分自身の指導コンセプトは連動して積み重ねて頭脳に整理して記憶させることが肝要であり必要な時に即座の対応が出来なければ意味が無いと思っている。


 資料として保管しておく事も大切ですが宝の持ち腐れにはしたくないものであり使わないものに【こだわり】を持つ必要はない筈です。


                            【生】の落書き帳より