S級の視線
                                    平田生雄

第83回   達 観


 私が尊敬する指導者は数多くおられますが枚方フットボールクラブ創始者であり指導者として異色の存在であった近江達先生について触れてみたいと思います。


平素、近江先生に対して畏敬の念を持って【達観】と呼ばせて頂いている。


 少年サッカーの普及と発展は全国少年サッカー大会が始まった頃から急速に歩を早めた訳ですが、中・高校生に目を向けてみると大半は学校単位のクラブ活動であり[Jr-Youth(U-15) Youth(U−18)]のクラブは指折り数えられる程しか無かったようで町のクラブそのものが異色だったといえる時代でした。(1970年代)


 私が指導者として活動し始めた頃のサッカー専門誌に【達観】の指導日記が掲載されていました。 (サッカーノート)


 発想がユニークであり教える事だけが指導ではない事を実践して結果につなげるのだから説得力があります。


 指導の原点とも言える [M−T−M Method] を自身の体験と構想を基に築かれた指導者であるが、その源は類稀なる観察力に有ると推測される。


 無駄な指導を省くから子供達の創意工夫に拍車が掛かるのである。


 枚方FCに能力の高い子供達が集まっていた訳ではないが創部まもなく彼らのプレーは注目されるようになり自由奔放にも見える彼らの一挙手一投足に魅了された方も多かったようです。


 当時、高校サッカーの強豪といわれるチームの指導者から枚方 FC と試合をするのが楽しみだと聞かされましたが「楽しみ=打倒枚方」であり近江マジックを模倣するチームも有りましたが形だけ似せても所詮、付け焼刃の手法では如何ともし難いのである。


 お話しを伺うと「私は何も難しい事はしていませんよ。」笑顔の中に自信が伺えるのは「やれば出来るものですが貴方に出来ますか。」と問い掛けているように思えたものである。


 【達観】との出会いから20数年の月日が流れるが何度お会いしてもサッカーに対する真摯な姿勢に心洗われる思いである。


 齢傘寿を迎えようとする【達観】が今でもトレーニングしておられるとか耳にして、失礼を省みず質問すると楽しそうにトレーニング内容の一部始終を語って下さいました。


 目指す子供達やプロ選手にも聞かせてやりたい話である。


 お会いする度にエネルギーを注入して頂ける【達観】に我々が道標として生かす事が大切であると責任を痛感させられるのです。


 【達観】今もってご健在でストライカーを目指しているサッカー少年である。


 「教育は百人の凡人を向上させるけれども、同時に、一人の天才を凡人に変える危険性をもつ」 【達観】語録にも一端を垣間見る事が出来る。


 http://www.goose9.com/hfc/takkan/index.htm